農業と養鶏業を必死で営んで来たからこそ今がある。
食と農、農と命 農家料理 雛游庵(すうゆうあん)
苦難を乗り越え、始めた農家料理。
時代とともに価値観がかわり、今では地域で生産されたものを地域で消費しようという地産地消の活動が全国各地で盛んに行われています。今回は、15年前から食材のほとんどを自家製で賄っているという驚きのお店があると聞いて、オーナーの末﨑貞子さんをお訪ねしました。お店の名前は「食と農と命 農家料理 雛游庵」。自店で養鶏した鶏肉と自家栽培の野菜を使ったお料理を提供しており、年間2万人を超えるお客様が訪れる人気店です。
末﨑さんは旧二丈町の農家の生まれで、今から28年前に農業に加えて自然卵養鶏を始めました。当時小学4年生だった長男の学さんが腎臓を患い、同じ頃、地域の婦人会の勉強会で添加物だらけの食品や輸入品の実態を知り、怖い食品、食材の氾濫に気づきます。この時に、家族はもちろん、少しでも多くの人へ安全な食べ物を供給し、食の大切さを伝えていこうとの思いから自然卵の生産に取り組み始めました。自給自足のためから始めた10羽のにわとりが、5年後には1000羽になり、同時に食と農の思いを伝えるため、子供たちの情操教育の農業体験、伝統的な食農文化の紹介や農的な暮らしの提案なども行なってきました。
ところが、にわとりを飼い始めて6年目にご主人が他界。家に閉じこもりがちな生活が3年間続きます。しかし、以前から「食と農、農と命、命の教育は農にあり」と信念を貫いてきた自身の思いが、まだ自分のやるべき事があるようで、何かを求め続けていました。その頃、こだわりを持って大切に育てたにわとりも、採卵鶏はいわゆる廃鶏で食肉としての販売価格がありませんでした。ヒナからこだわりを持って育てた命を無駄にせず消費者の方々へ提供できる方法はないかと思いは募り、「もう人任せには出来ない」と農業の延長線上で始めたのが雛游庵なのです。
にわとりを始めたきっかけは、息子さんの“病気”であり、雛游庵を始めたきっかけはご主人の“死”でした。
『自分史のすべてが家族とのかかわりの中で起きたという不思議さを感じています。今まで自分がやってきた事を語り部とし、次世代の人々が安心して生きていけることを念願し、これからも、農の素晴らしさや、食の大切さを伝えていきたい。』と想いを語っていただきました。
現在は採卵鶏から肉専用種に切り替えて、自店で提供する料理の分だけを飼育しています。通常の養鶏の場合は、コスト面で採算が合わなくなるため長くても90日間飼育されて出荷されます。しかし、雛游庵の場合は油がのって鶏本来の味がでるまで長期飼育されています。本当に心を込めた究極の鶏料理を味わいたい方は、ぜひ雛游庵を訪れてみてください。
糸島市志摩津和崎131-3
TEL092-327-2166
ランチタイム11:30~15:00
夜17:00~21:00
定休日:月曜日、第3火曜日
◎農家料理ランチ1,500円~
◎しあわせ膳1,500円(小鉢、前菜、野菜、選べるおかず、豆乳蒸し、ごはん、つけもの、汁物)
◎めぐみ膳2,000円(野菜のセイロがメイン)
◎くわ焼膳2,300円
◎水炊きコース3,200円~
◎水炊き一人前2,500円(2人前から)
※その他、地鶏会席、季節会席などもご用意しています。
☆今年の7月から20名様までご利用可能なバーベキューコーナーを新設しました。1年を通じてご利用いただけますので、お気軽にお問合わせください。