風唄窯 オーナー 内田 秀明さん

 

陶芸教室で培った作風。

可愛らしく、柔らかで、ほのぼのとした内田流。

 

糸島は今や人気の注目エリアですが、沢山の窯元や手作り家具の工房があったり、画家や音楽家など多くの芸術家が活躍する地域でもあります。工房が一同に会する「糸島クラフトフェス」も、糸島の大きなイベントの一つとしてすっかり定着しました。今回はそんな糸島で活躍している陶芸家のひとり、風唄窯の内田さんをお訪ねしてお話をうかがいました。

内田さんは、これまで糸島市志摩馬場にあった工房を、つい最近野北に移しました。民家を改装した工房はギャラリー&ショップ、陶芸体験の出来る教室に別れていて、床のタイル貼りや壁塗りは内田さん自身が手がけたとのことで良い雰囲気に仕上がっています。

内田さんは30歳の時に脱サラして秋月の実家から近い上野出身の師匠のもとに弟子入り。陶芸は「土練り3年、ろくろ8年」といわれ、根気強さのいる世界です。ところが内田さんの師匠にあたる方は、「できるだけはやく独り立ちしなさい」という考えの方で、比較的短い期間に小物から大きな壺まで、土練り→成形→絵付け→焼成と、ひと通りの経験をさせてくれたそうです。

『窯元の方針によりけりですが、ろくろで品物を作らせて貰えるようになるまで数年かかる場合も。僕の場合、一連の作業を早く教わった分、短期間に成形に重きを置いた修行をすることが出来ました。』と内田さん。

その後は福岡市の陶芸教室で講師を経験。ここでは特に上司や先輩がいたわけではなく、いきなり内田さん自身がすべての指導を任されることに。ご自身で色々なことを学びながら生徒さんの指導にあたる、行錯誤の日々だったそうです。

『当時は陶芸ブームだったこともあり、OLさんなどたくさんの女性が陶芸を学びに来ていました。生徒さんに喜んでもらえるものを作りたいし、教えたいと本当に懸命でした。振り返れば、このときに今の作風が確立されたのだと思います。』と語っておられました。

陶芸についてはまったく素人の私ですが、内田さんの作品は可愛らしく、どこか柔らかでほのぼのとした雰囲気を感じます。上野焼の影響か、重くもなく、かといって軽すぎない“薄づくり”に仕上がっており、心地よい質感があります。

陶芸の世界は非常に奥が深く、東北から沖縄まで、日本各地に陶磁器の技法が存在しています。そのため、粘土成分の違いはもちろん、成形の方法も異なります。さらに、伝統技法を重んじる人、新しい表現法に挑戦する人など多彩です。

内田さんの場合は後者に近いような気がします。基本は大切にしつつも伝統にこだわりすぎない自由な発想が、内田さん独自の作風につながっているのだと思います。

職人気質で販売や宣伝が不得手な内田さんを助け支えているのが、陶芸を通じて知り合った奥様です。きっとこれからも二人三脚で風唄窯を盛り上げ、人を笑顔にするような作品を作り続けてくれるものと思います。

 

◆連絡先 

糸島市志摩野北218-1

電話番号092-327-2931

営業時間10:00~17:00

定休日:月曜日・火曜日